平成26年度総合医学会総会を開催しました
当院では、全職員が1年間にわたり部門横断的に学ぶことを目的に総合医学会を開催しています。
平成26年度の総合医学会は『田川地域住民のための救急医療』をテーマとして取り組み、平成26年7月31日に開催した例会では救急医療の現状と問題点について、平成26年12月11日の例会では、田川地区消防本部との連携について学んできました。今回の総会では、最終的な病院としての成果の発表や講演を行いました。
第1部 メディカルラリー(BLS大会) 第2部 発表 「知っておきたい、よくある症状と急患疾患」 第3部 特別講演 「救命救急センターにおける3次救急医療の最前線」 福岡大学病院救命救急センター長 福岡大学医学部救命救急医学講座 主任教授 石倉 宏恭 先生 |
■第1部
第1部では、メディカルラリー(BLS大会)を行いました。
※メディカルラリーとは
医師、看護師、救命救急士などがチームを組み、認定された救急の模擬現場(シミュレーション)を次々と解決していく競技です。
救急の現場では、迅速で正確な判断が求められますが十分な実践準備がなければ対処できません。今回は、現場のような緊迫感のある中で行動してもらうために、時間に追われる競技スタイルで、現場に近い症例を設定して行いました。
CACE1 救急初療室での場面で、心肺停止の患者さんが救急車で搬送されてくるときの受け入れ準備から初動まで
(プレイヤー設定:医師1人、看護師3人、救急隊・コメディカル1人)
【評価ポイント】頸椎保持者の合図でストレッチャー移乗ができる。モニターが付いたらすぐに1次評価を行う。家族から情報収集ができる。低体温に対する保温ができる。加温した生食輸液を使用する。
【評価者コメント】メンバー同士の声の掛け合いが良かった。絶え間ない心臓マッサージができていた。
CACE2 病室における患者急変(時間設定を夜間とし、当直医がすぐにこれに来れない場面)
(プレイヤー設定:看護師4人、コメディカル1人)
【評価ポイント】最初にモニター付き除細動器でAEDモードにする。当直師長または他病棟へ応援要請ができる。カルテを開き情報収集ができる。ONRの確認ができる。2ショックで蘇生したことを医師に報告できる。
【評価者コメント】物品準備が全チームできていて、いつでも医師が来たら次の処置が行えるようにしていた。お互いの声掛けやチームでの協力ができていた。
CACE2では、看護師やコメディカルだけでも正しく蘇生処置を行えば救える命があることを理解し、基本となる「絶え間ない胸骨圧迫(心臓マッサージ)」と「早期の除細動(AED)」は重要だと再認識することを目的としました。
CACE3 院外、駐車場での対応
(プレイヤー設定:医師1人、看護師3人、コメディカル1人)
【評価ポイント】家族からの情報収集で低血糖を聞きだした。物品準備担当と対応担当と役割分担した。簡易AEDを使用した。外での対応時、保温に努めた。パニック状態の家族を離した。パニック状態の家族へ声掛け等行い、落ち着かせた。
【評価者コメント】どのチームも患者さんを救いたいという一生懸命さを感じた。症例の難易度が高いにも関わらず、どのチームも状況を把握し頑張っていた。
今回は、心肺蘇生の応用力を学ぶため、チームメンバーが役割分担をしっかり行い、必要な準備ができたチームは蘇生が成功できるようにし、初動が不適切であれば、その後どんなに頑張っても蘇生しないという厳しいシナリオでした。
参加したメンバーはもちろん、多くのギャラリーにも楽しみながら学べる機会となり、院内の救急蘇生のあり方を考える良い機会となりました。
■第2部
第2部では「知っておきたい、よくある症状と急患疾患」というテーマで3つの発表がありましたので、ご紹介します。
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「胸痛・呼吸困難」 内科(循環器) 内科循環器内科部長 桑田 孝一 医師 |
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胸痛と呼吸困難を起こす疾病として、主に心不全や肺炎、虚血性心臓病、狭心症、心筋梗塞をとり上げ解説しました。また、心不全と肺炎をどう見分けるのか問題形式で、その場で考えてもらいながら回答していきました。 |
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「腹痛・吐下血」 内科(消化器) 医長 石川 智士 医師 |
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消化管に関して、食道・胃・大腸領域、肝臓・胆嚢・膵臓領域に分けて説明しました。急性胃潰瘍や胃潰瘍出血、胃潰瘍の経過など様々な症例を写真を使用し、わかりやく発表しました。 |
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「頭痛意識障害 熊井 典孝 看護師、今田 悠介 研修医、外科 部長 松隈 哲人 医師 |
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日本人に多いとされる緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛を説明しました。また、命にかかわる危ない頭痛として、くも膜下出血や脳出血、慢性硬膜下血腫について、病気の説明、原因、前兆、症状、検査方法、治療方法などを発表しました。 |
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■第3部
第3部の特別講演では、石倉宏恭先生に、「救命救急センターにおける3次救急医療の最前線」について講演していただきました。ここでは、先生が重点的に話されていた救命救急センターについてや災害現場での医療をとり上げさせていただきます。
※3次救急医療とは
重篤な身体状況の管理が必要な患者に行う医療のこと。
日本の救急医療体制は、初期救急医療、2次救急医療、3次救急医療に分けられ、当院は、2次救急医療機関で、石倉先生が所属されている福岡大学病院救命救急センターは3次救急医療機関です。
~救命救急センター~
救命救急センターは、重症患者の救命治療を優先に行う機関で、人口100万人あたり1か所を目安に設置されており、現在、全国に266か所、福岡県には9か所設置されています。
講演では、脳神経救急では脳内出血の場合神経内視鏡手術を行い、クモ膜下出血ではコイル塞栓術を行っているなど福岡大学病院救命救急センターの最先端の治療方法について、実例を使用し、詳しく話していただきました。
石倉先生の考える救命・救急医療は、重症患者の命を助け、一般市民や救急隊員を教育し、災害現場での被災者を救出・治療すること、また、救急医療体制を行政と一緒に作る(法制化する)ことだそうです。そして、救命救急医とは、重症患者の命を「今」助けることだと教えていただきました。
~災害現場での医療~
災害現場で行う医療は、気道確保・血管確保・疼痛緩和・メンタルケアで、自衛隊や消防隊、救急隊と連携することが大切だとご自身の経験をもとに話していただきました。災害時に患者を最初に救助するのは医師ではありません。最初に市民が発見し、その後自衛隊や消防隊・救急隊が救助するため、災害時は現場での連携こそが必要だと話されました。
総合医学会で『田川地域住民のための救急医療』というテーマのもと、1年間にわたり各職種の多くの職員が学び、意見を交わし、実習に取り組みました。その結果、田川地域の救急の現状と問題点を把握し、改善のために何をするべきかを職員全員が認識できたと思います。これをきっかけとして当院の救急医療体制を改善していき、今後も、救急医療を学ぶ機会を定期的に設けていきたいと思います。
平成26年度の例会は、こちらをご覧ください。
総合医学会例会(平成26年12月11日開催)
総合医学会例会(平成26年 7月31日開催)