医療界では、いわゆる2025年問題に備えるための地域医療構想の議論が進められていて、当院もその中で果たすべき役割の構築を図っています。地域医療構想とは今後の地域の推計人口や年齢構成の変化などに対応するために地域の病院にある病床(入院ベッド)の機能を急性期や回復期などに分類し、適正な種類と数の病床を配置することで無駄のない効率的な医療提供体制を作り、患者さんを住み慣れた地域に帰す連携を推進していくためのものです。もう一つ、最近よく聞かれる言葉として地域包括ケアシステムがありますが、これは地域に戻った患者さんに慢性的な病気や障害を持っていても、通院だけでなく在宅での医療や看護、さらに介護やリハビリでサポートし、できるだけ長く自宅や施設で快適に過ごせるようにするためのものであり、当院にはその中で基幹病院として求められる役割もあります。
さて、全国的に見ると福岡県は医師の多い県ですが、これは県内に4つの医学部があることと関連していて、県内13の二次医療圏別に人口当たりの医師数を見ると医学部のある3つの地域(福岡、北九州、久留米)では全国平均をはるかに上回っていますが、その他の地域はほとんどで全国平均より少なく、田川では人口当たりで都市部の半数程度の医師しかいません。一方で福岡県の一人当たりの医療費は国の平均より高く、特に後期高齢者の医療費は全国で最も高く(年間110万円以上)なっていて、例えば早くから生活習慣の改善や検診などの予防医療に取り組んできた長野県に比べると1.5倍近くになっています。
病院の医療従事者だけでなく、保健師や介護従事者、救急隊員の方々など限られた人的資源の中で皆様に住み慣れた地域でできるだけ長く、快適に過ごしていただくための地域完結型医療を実践するには、住民である皆様の協力が欠かせません。病気になったら全て病院にお任せというのではなく、まずは自分の健康に当事者意識を持っていただき病気にならないように心がけていただくこと、さらに診療だけでなく日常の健康相談や病気の予防のために、かかりつけ医を持っていただくことをお願いしたいと思います。現在、地域の中核病院では外来機能よりも入院機能に重点を置くことが求められており、当院でも病診連携、病々連携さらに病院と介護施設との病介連携を通じて地域の方の病気は地域で治す地域完結型医療をさらに推進していきたいと思います。