医療安全研修会及び感染防止対策研修会を開催しました。
平成28年9月1日、医療安全研修会と感染防止対策研修会を同時開催しました。
講師は、いずれも本年4月に新しく赴任した小児科の尾上泰弘先生にお願いしました。
平成28年度第1回医療安全研修会
演題 「同じインシデントを繰り返さないために そしてアクシデントを減らすために
フールプルーフとフェイルセーフの理論を応用して」
講師 小児科 尾上泰弘医師
“医療に安全は存在しない リスクのみ存在する”
現在は、自治医科大学の教授である河野龍太郎先生の言葉を引用して始まった尾上先生の医療安全研修会は、「医療安全」の歴史や先生の経験したインシデント、そして院内で撮影された写真を使っての事例研究の要素も取り入れ行われました。
特に今回は、エラー防止対策として、そもそもエラーをできないようにする「フールプルーフ」、エラーが起きても安全に作用する「フェイルセーフ」の理論を説明していただきました。
フールプルーフとは、誤った操作をしないよう、万が一誤った操作をした場合でも故障したり危険な状況にならないように設計するという考え方で、県内で起こった“酸素と誤ってCO2を吸入し2人を死亡させるという事故”を題材に、当院救急外来における酸素・笑気・圧縮空気のホースの差し込み口にピンがあり、誤った操作をしないようフールプルーフで設計されていることが紹介されました。
また、フェイルセーフとは、故障や誤操作によるトラブルが発生することをあらかじめ想定し、起こった際には致命的な事故や損害につながらないように設計するという考え方で、これについては、先生ご自身が薬剤処方時に起こったインシデントを例に説明していただきました。
インシデントレポートは始末書ではなく宝の山である。そしてこれを分析し、フールプルーフ・フェイルセーフ理論を応用して改善することで安心・安全な医療を提供する、とまとめました。
平成28年度第1回感染防止対策研修会
演題 「ダニに刺された時の対処法:死亡率30%
SFTS(重症熱性血小板減少症候群;中国は院内感染死亡例あり)の症例から学んだこと」
講師 小児科 尾上泰弘 医師
講師の尾上先生は、ICD制度協議会インフェクションコントロールドクターの資格を持ち、続けてSFTSを題材に感染防止対策研修会の講師も務めていただきました。
SFTSとは、重症熱性血小板減少症候群といい、マダニに刺され血を吸われることで感染し、そのうち約30%が死に至るという驚異的な死亡率を示しています。西日本では50例ほどであったものが最新のデータでは200例を超えており増加傾向にあります。マダニは成虫になる過程で脱皮をしますが、血を吸わないと脱皮ができないという性質をもっており、1年の中でやはり5月頃が最も多いという結果が出ています。特に高齢者に多いのですが、先生は当院への赴任前の病院において、昨年5月、日本で初の小児例を診療したとのことでした。マダニは刺すとセメント様の物質を排出するため、刺されると引っ張っても取れなくなりますので基本は切除になります。マダニに刺されたら自分で取らずに病院を受診してください。
そんなマダニですが、感染を防ぐためには対策を立てないといけません。マダニは茂みに生息しますので茂みには近寄らない、必要がある場合は長そで長ズボン着用、帰宅時は上着は外で脱ぎ持ち込まない、などがあります。中国や韓国ではSFTSに感染した患者さんを治療した医師・看護師が感染し死亡した例も報告されており、院内感染対策上、重要とのことでした。
詳しくは国立感染症研究所のホームページに分かりやすく説明があるので、インターネット・スマホなどでSFTSを検索してみてくださいと説明がありました。
今回の研修会は、尾上先生の軽快なお話と実例を用いた具体的なお話で非常に有意義な研修会となりました。会場には立ち見の職員で身動きが取れないほど多くの職員が詰めかけ、医療安全、感染対策ともに多くの収穫を得た研修会となりました。