平成27年度 総合医学会第3回例会を開催しました 医療の質(12月17日)

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総合医学会 第3回例会

平成27年度テーマ『医療の質を測り、改善しよう』

 

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平成27年度総合医学会は、「医療の質」をメインテーマとして取り上げ、全職員で取り組んでいます。

 まず、平成27611日の第1回例会で、済生会熊本病院院長の副島秀久先生に「Big Dataと医療の質管理~電子クリニカルパスの有効利用~」 という演題で、クリニカルパスをどのようにして医療の質の向上に繋げていくのかについて講演していただきました。

次に、第2回例会を平成271023日に開催し、各診療科や部門が診療の質の視点で定めたテーマに沿って、現状確認と問題点の洗い出し、改善策の検証を行い、今後、診療の質を高めるためにどうすべきか、その具体的な方策、取組についての考察を示しました。

今回の第3回例会では、Quality Indicatorによる医療の質の評価について、聖路加国際大学情報システムセンター長の嶋田元先生に講演していただきました。

 

嶋田先生

 

■演題

 「QIによる医療の質の評価

   -QIはどのように始めればよいか

        QIを用いてどのようなことができるのか-」

 

■講師

聖路加国際大学 情報システムセンター長 嶋田 元 先生

 

 

 

 

 

■内容

 【QI概論】

  ・医療の質とは?

  ・医療の質の定義 など

 

 【どのように始めればよいか?】

  ・サンプル改良と課題

  ・各部署へのヒアリング

  ・指標の受け取られ方

  ・医療の質向上への取り組み など

 

 【どのようなことができるのか?できたのか?】

  ・QIを用いた医療の質向上への取り組み

  ・各指標の利点と欠点

  ・指標の選択はどうしたらよいか? など

 

 【根拠がない場合はどうする?】

  ・転倒・転落へのQI委員会の対応

  ・実際に起こった事例からルールを策定 など

 

 【質と価値】

  ・質の測定

  ・医療の価値

  ・量から質へ、質から価値へ

  ・質の評価

  ・改善すること

  ・管理から文化へ など

 

 医療の質とは、「個人や集団を対象に行われる医療が、望ましい健康アウトカム(結果)をもたらす可能性をどれだけ高くするのか、その時々の専門知識にどれだけ合致しているのか、それらの度合い」と定義されており、根拠に基づいた医療と患者が受ける日常診療との「格差」が小さいほど、質の高い医療が提供されていることを意味します。この「格差」の有無・程度を見に見える形で、定量的に表現しようとする指標が「QIQuality Indicator)」です。

医療機関には、患者の視点に立った、安全・安心で質の高い医療の提供が求められており、「医療の質」の評価・改善の取組が積極的に行われています。

今回、嶋田先生から、聖路加国際病院での取組みや実績、全国的・国際的な指標、実例等を基に、QIをどのように始めればよいか、QIを用いてどのようなことができるのかについて教えていただきました。

 

講演内容を一部紹介します。

 

  

どのようなことができるのか?できたのか? ~QIを用いた医療の質向上への取り組み~ 

 

 聖路加国際病院では「医療の質を改善し、過去に提供していた医療よりも、今日来院した患者の方がより良い医療を受けられる状態にする」という目的のもと、2005年から取り組みがスタートしました。以降4年間を通してQIの測定と改善活動が繰り返し行われ、その実績は書籍により一般公表を実施するまでに至りました。その具体的なサイクルを追っていくことで「どのように始めればよいか・どのようなことができるのか?できたのか?」が見えてきます。

QIの指標の選定

  患者の結果を良くしたいということであれば、結果に対する評価が必要となります。したがって、「変化が見やすい指標」「短期で結果が出る指標」を選ぶことが望ましいです。また、改善活動により医療の質が大きく向上する指標(当初の達成度が低い指標)に着目し、「改善可能な指標」を選ぶことが肝要です。

QIの算出

調査の対象となる症例について、米国が公表している指標をベースにサンプルを算出し、課題と改良点を見出し、精度を高める手法を考察しました。

調査したい指標、QIに対する考え方の照会を行うとともに、サンプル指標を示し、値の改善する方向に意識をシフトさせるためにヒアリングを行いました。また、QIの算出に参考となる文献や資料を提供し、実際に出てきた値について、現場と一緒に検証し、改善を進めました。

 ・多職種による検討、改善策の決定・実行

   各種委員会や当事者、関連職種など他職種で指標に対する要因分析を進め、改善策を決定します。改善策の中でも、勉強会・研修会の実施は効果が大きく、専門診療科の医師から他診療科の医師に向けた最新の医学知識の勉強会を実施したところ、医師全体の知識の底上げにより、医療の質が向上した実績があります。

 

  QIを用いた医療の質向上への取り組み

 

 

【根拠がない場合はどうする? ~転倒・転落へのQI委員会の対応~】

 

医療の中でも医学的な根拠のないものもあり、例えば転倒・転落の発生やインシデント事例等については、事例ごとに専門の研究組織を発足させ、実際に起こった事例をベースに収集データの解析・検討を行い、改善を図りました。

・設備投資

  病室・トイレ内・ベッド周辺での転倒率が半数を占めていたため、段差の解消、手すりの設置等により環境を整えました。また、現場の提案により姿勢補助用の器具を導入し、転倒率を抑えることができました。

・アセスメントの改善と徹底

  既存の転倒・転落アセスメントシートの適用が徹底されていない実態が判明したため、アセスメントの項目の見直しにより適用しやすい形に改善するとともに、適用の徹底を周知しました。

 

【13項目から7項目に厳選】

項目表 

 

・患者説明の方法の改善

 転倒・転落予防のための患者・家族への説明書を用いて、周知と注意喚起を図りました。

 

転倒・転落へのQI委員会の対応  

 

【質と価値 ~改善すること~】

 

 聖路加国際病院として10年間改善に取り組む中で、改善に必要なことが見えてきました。

 ・他人に見られている、監視されているという意識があるだけで、パフォーマンスや値が向上することがわかったため、例えば指標や結果の院内掲示を行うだけでも効果があります。

 ・エビデンスとの比較・過去の数値や他施設との比較は、どこに問題があり、どう改善していくのかを考える動機づけになります。

 ・個人による改善の努力だけでなく、組織としてどうすれば良くなるかという組織的アプローチが肝要になってきます。

 

 

  改善すること

 

 

【質と価値 ~管理から文化へ~】

 

 毎年各部門で人の入れ替わりが起こるため、いつの間にか組織内の常識が非常識に変わっていることが考えられるので、常に毎年同じことを職員に対して周知する組織的な対応が重要になってきます。また、改善していくという文化を根付かせて、職員が自発的に取り組む組織をつくることが今後の大きな課題です。

 

 管理から文化へ

 

【参加者の感想】

 

 参加者からは、「始めるだけではなく、継続することが難しいと感じた」「測定しなければ見えないということを実感した」「プロセスを重視し、質の向上に資するデータ分析が必要だと感じた」等の声がありました。 

 

 当院では現在、平成283月開催予定の総合医学会総会に向けて、各診療科・部門が「診療の質の評価」について取組を進めています。今回の講演内容を踏まえ、各診療科・部門での取組が一層深いものとなり、医療の質の向上に繋げられるよう、組織内への浸透や質改善文化の醸成に努めたいと思います。

 

総合医学会


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