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病院事業管理者あいさつ

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平成29年5月

齋藤病院事業管理者

   

  「病院再生の成就とその評価」

田川市病院事業管理者 齋藤 貴生

 

田川市立病院は、念願の「病院再生」を果たし、平成2811月に開かれた市民公開講座において「病院再生」の成就宣言を行い、病院全職員ならびに関係者に謝意を表しました。病院が経営危機に陥ってから再生を果たすまでに、実に20年を要しています。ここでは、平成22年度から行ってきた「病院再生」について、評価を行いその意義について述べます。

 評価を行うには、基準となる学術的な理論が必要ですが、「病院再生」については、詳細なデータに基づいて分析された、経営学的な視点に立つ学術専門書が見当たりません。そこで、「企業再生」についての貴重な著書、Donald B. Bibeault の“Corporate Turnaround”を参考にして評価を行いました。

 まず、「企業再生」の定義は、収支が下降して赤字となり、さらにキャッシュがマイナス、即ち破たん状態となった時点で、何らかの措置を行うことにより、キャッシュがプラスとなり、さらに収支が上昇して黒字となった場合としました。

 経営下降・破たんの要因としては、内部要因と外部要因がありますが、内部要因単独は半分(52%)、外部要因単独は僅か(1%)であり、残りは両要因の共存となっています。内部要因のうちの大部分はマネジメント因子であり、他に組織文化が関与します。主要なマネジメントエラーとして、市場の変化への対応失敗、執行管理の不足、過大拡張、過剰なレバレッジ(過剰な借入によって生じる利益の減少)の四つがありますが、田川市立病院では、経営破たんの前にこの四つのエラーのいずれもの関与が認められました(資料1)。

 外部要因としては、経済的変化、競合的変化、行政的制約条件、社会的変化、技術的変化の五つがありますが、医療、特に日本の医療では、診療報酬体系を含め医療行政の影響が強いことから、一般企業と比較して行政的制約条件がより強く関与すると思われます。田川市立病院の場合でも、医療制度構造改革と新医師臨床研修制度が経営破たんに関与していました(資料1)。    

 再生に取り組むには、経営破たんに陥った要因を明らかにして、重要な要因に対しての対策を行うことが基本になります。再生への取り組みに、五つの型が挙げられていますが、田川市立病院の場合は、このうちマネジメント・プロセス再生と行政関連再生の二つの再生型を実践していました(資料2)。マネジメント・プロセス再生型では、脆弱なマネジメントに対して、新たなマネジメントへの転換、組織文化の転換、タイトでタフな管理体制の導入等を行いました。行政関連再生型としては、経営形態の変更、医療政策の転換(地域医療再生基金など)等が関与していました。

 再生期における取組みは、五つのステージに分けられ、それぞれのステージで取り組む内容と期間が異なります(資料3)。まず、経営交代準備期間が必要であり、新たなトップの招聘と新たなマネジメント体制の整備のための準備が行われます。田川市立病院では、この期間に1年間を要し、経営形態検討委員会の答申、経営形態の変更手続き(一部適用から全部適用へ)、病院事業管理者の人選等が行われました。 

 経営交代期には、準備期間に決められたことが実行に移されます。評価期(6 か月以内)には、再生可能性の見極めを含め、問題の検証、解決策の決定、行動計画作成・周知が行われます。緊急期(6 か月以内)は、資金不足を解決しなければならない重要な時期で、キャッシュフロー確保、清算・売却の実施などを行います。安定化期(6 か月~ 1 年)には、成長志向で計画執行を進め、利益性を追求します。正常成長回復期(1 2 年)には、事業拡張・市場への浸透、収益性の追求、成長への投資、顧客満足度向上などを行います。

 田川市立病院の場合には、評価期には6 か月で評価及び中期事業計画(再建計画を含む)の策定を終え、また、緊急期には6 か月で資金確保(基準外繰入:484 百万円、3 年間)を行うことができました。安定化期は、医師の総引き揚げ(長崎大学)などが影響して3 年間を要しましたが、正常成長回復期は2 年で終えることができました。

 以上、今回の評価により、田川市立病院の再生が、Bibeault の企業再生理論に概ね沿って行われていることが示されました。意義は、当院の再生への取り組みが適正であったこと、および、「企業再生」の理論が「病院再生」にも当てはまることを実証したことです。

 

 資料1
 資料2
  資料3

 

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略歴

齋藤 貴生

 現職  田川市病院事業管理者、田川市参与

      全国病院事業管理者協議会副会長

      病院経営の質向上研究会会長

 

 

 本籍  福岡県福岡市中央区大名

 

 学歴

      昭和39年  3月  九州大学医学部医学科卒業

           42年 4月  国立がんセンター研究所生化学部国内留学

           45年  3月  九州大学大学院医学研究科修了

           48年  5月  九州大学医学博士授与

 職歴

      昭和45年  4月  九州大学付属病院医員(第二外科)

           47年  2月  九州大学医学部外科学第二講座文部教官助手

           51年12月  米国フレッド・ハッチンソン癌研究所腫瘍免疫部門留学

           54年  4月  大分医科大学第一外科助教授                     

       平成  5年  4月  国立病院九州がんセンター消化器部外科医長

             7年  7月  国立病院九州がんセンター臨床研究部部長

          10年 4月  佐賀県立病院好生館館長(院長)

          10年 4月  佐賀医科大学参与、臨床教授

          12年 5月  全国自治体病院協議会常務理事    

          16年 4月  福岡県対がん協会会長

          18年 4月  大分県病院事業管理者(特別職)

         20年 8月  全国病院事業管理者協議会副会長

          22年 4月  福岡県田川市病院事業管理者(特別職)

          22年 6月  九州大学大学院医療経営・管理学講座特別教員

          22年 7月  田川市参与、現在に至る

 

 

 専門  消化器外科、特に食道がん外科、病院経営・管理

 

 研究  腫瘍学(発がん、免疫)、医療経営学

 

 主な学会活動         

       日本癌学会名誉会員、日本食道学会特別会員、医療マネジメント学会評議員

  

 

 

 

 

 

 

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